サイバー攻撃が冷凍・冷蔵設備に影響、食品廃棄などの被害も
フランスでは、スーパーマーケットの冷凍・冷蔵設備を管理する制御システムがサイバー攻撃を受け、霜取り設定が不正に変更される事案が発生しました。
報道によると、約700店舗に影響が及び、食品廃棄などの被害が生じています。
今回の事例は、サイバー攻撃が情報システムだけでなく、ネットワークにつながる機器の稼働にも影響を及ぼすことを示しています。
温度管理を行う制御システムは、物流倉庫や医療機関、製薬企業などでも利用されており、冷凍・冷蔵設備の制御に支障が生じれば、商品の品質や安全性、事業継続に影響が及ぶ可能性があります。
世界で1万件超の観測結果を確認、冷凍・冷蔵設備に潜むセキュリティリスク
SecurityScorecardは、インターネット上の公開情報を収集・分析するエンジン「Driftnet」を活用し、冷凍・冷蔵設備を遠隔監視・管理するWebインタフェースの公開状況を調査しました。
対象はDanfoss社の「StoreView Web」とCopeland/Dixellの「XWEB」シリーズです。
調査では、OpenAIのサイバーセキュリティ向けプログラムのアクセス区分「Daybreak Blue」を通じて利用したAIを活用し、検索対象を広げる手掛かりや、追加確認が必要な観測情報を整理しました。
さらに、フランスのサイバーセキュリティ対応組織「CERT-FR」の注意喚起やメーカー資料との照合を通じて、リスクと対応上の課題を検討しました。
<主な調査結果>2026年10月13日時点
● 冷凍・冷蔵設備の管理用Webインタフェースを世界で計1万1,622件観測: 「StoreView Web」は75カ国で5,282件、「XWEB」シリーズは世界で6,340件を確認
● 約73%が暗号化されていないHTTP通信: StoreView Webで3,612件、XWEBシリーズで4,816件、計8,428件を確認
● 標準的なポートに限った調査では見落とす可能性: StoreView Webの観測結果の半数以上が、一般的なWebポート(80・443)以外を使用。製品名や標準的なポートに限定した調査では、公開された管理画面を十分に把握できない可能性があります。
※観測件数は製品群ごとに公開IPアドレスとポートの組み合わせで重複を除いて集計したものです。機器台数や被害店舗数、脆弱性・侵害の有無を示すものではありません。
今回の調査結果を踏まえ、特に注意が必要なのが、外部の保守業者によるリモートアクセスです。
冷凍・冷蔵設備は外部の専門業者が遠隔管理する場合も多く、その接続経路が企業のIT資産管理台帳に登録されず、把握されていない可能性があります。
そのため、自社だけでなく、取引先や委託先が管理する設備も含めて外部公開状況を確認し、現場の運用に支障をきたさないよう、保守業者と連携して対策を講じることが重要です。
企業が取り組むべき5つの対策
今回の調査を踏まえ、制御システムのセキュリティリスクを低減するために、以下の5つの対策が重要です。
1. 外部に公開されたシステムの把握
インターネット上からアクセス可能な管理画面やIPアドレスの調査と、社内の資産管理台帳との照合による、管理対象から漏れているシステムの特定
2. 設備の稼働状況と安全性の確認
管理画面の表示だけでなく、独立した温度計やセンサーなどによる実際の稼働状況の確認と、温度設定、霜取りスケジュール、警報履歴などの点検
3. 不要な外部アクセスの制限
管理画面のインターネットへの直接公開の解消、初期パスワードの変更とアカウント・権限の見直し。
保守業者と連携し、必要な遠隔監視や警報通知を維持しながら、VPNなどによる安全なアクセス経路の確保
4. 機器の脆弱性とサポート状況の確認
機器の型番やソフトウェアのバージョンの確認、セキュリティ更新の適用、サポート終了機器の隔離や計画的な交換
5. 取引先・委託先との連携体制の整備
設備の所有者、保守業者、ネットワーク管理者の責任範囲と連絡体制の明確化、対策実施後の外部公開状況の再調査と継続的なリスクの確認
サイバーリスクの可視化から、安全な対策の実施へ
今回の事例は、サイバー攻撃が情報システムだけでなく、設備の稼働や商品の品質、安全性、事業継続にも影響を及ぼすことを示しています。
こうしたリスクに対応するには、外部公開状況の可視化やAIによる脅威分析を、設備の所有者・管理者、機種、運用状況の確認につなげることが重要です。
企業には、保守業者や現場の担当者と連携し、設備の安全な稼働を確保しながら対策を進め、その効果を継続的に確認することが求められます。